読書について/面白くてタメになる読書のすすめ

読書について

ドイツの哲学者、ショーペンハウアー(ショーペンハウエル)の『読書について』をご紹介します。

ほしにゃー

難しそうと思った方、本文163ページしかない薄い本ですのでご安心を!

No book, No life.
と言っても過言ではないほしにゃーですが『読書について』つまり、本の読み方についての本を読むのは初めてでした。

本を読むのはちょっと苦手かな(^^;)という方も、読書家を自認しておらる方にも楽しめる上にタメになる『読書について/ショーペンハウアー著』をご紹介します。

目次

『読書について』の基本情報

基 本 情 報
  • 『読書について』ショーペンハウアー著/鈴木芳子訳
  • 発行元 光文社古典新訳文庫
  • アルトゥール・ショーペンハウアーはポーランド生まれ、ドイツ国籍の哲学者。
  • 主著『意志と表象としての世界』は刊行当時売れなかったが、そのわかりやすい注釈書的『余録と補遺』がベストセラーとなる。『読書について』は『余録と補遺』(1851年刊行/著者63歳)より3篇を訳出したもの
  • 旧制高校などで歌われた「デカンショ節」はデカルト・カント・ショーペンハウアーの頭部分を繋げたものという説がある。旧制高校ではこの3人の哲学を主に学んでいた。

高名な哲学者ということもあり、さぞかし小難しい読書指南をしているのかと思いきや……

『読書について』は読書をする上での注意点・着眼点を教えてくれる指南書として優れています。
が、ショーペンハウアーの舌鋒が鋭い上に、気に食わない文士への悪口が微に入り細を穿つ(しかも長い)ので、読んでいるうちにだんだん楽しくなってきてしまった私。

同じ読書指南書の『乱読のセレンディピティ』(外山滋比古著)はユーモアを交えた穏やかな著作で、性格の差が出ていて読み比べると面白いですよ。

『読書について』概要

『読書について』は『余録と補遺』にある3篇を抜き出したものです。

自分の頭で考える

読書は自分で考えることの代わりにしかならない

ショーペンハウアー著『読書について』

ショーペンハウアーはただ『知識を蓄えるため』の読書、多読に警鐘を鳴らしています。
本とは他人の思考の集大成であり、読書とは他人の思考をなぞること

他人が考えた、いわば『借り物』の継ぎはぎで自分を形作るのは危険であるというのです。
ただこれはショーペンハウアーが本を読むなと禁止しているのではなく、『主』と『従』の関係を崩してはいけないのだと捉えました。

どんなに優れた著者が書いた本でも、そっくり丸呑みして自分と同一視することの愚かさを説いているのではないか。
良書から様々なインスピレーションや知識を得るけれども、飽くまでも読み手が『主』であり、本は読み手のオリジナリティを補強してくれるもの(=『従』)なのだと。

今月は〇冊読みました!と読書量だけを誇る人に違和感があったのですが、この辺りが関係している気がします……あっショーペンハウアーの影響がw

またフェイクニュース見出し詐欺などが取り沙汰されている昨今、自分の頭で考えることの重要性が高まっているのではないでしょうか。
ニュース記事をどう読み解くのか、毎日シャワーのように降ってくる『他人の思考』の中で『主』を保っていく力が試されている気がします。

著述と文体について

どういう本を読むべきか?
ショーペンハウアーは『オリジナルを読め』と言っています。

読みたいテーマの原案者、発見者の著作を読むのが良い。
となると、文系理系問わず『古典』を読みなさいということですよね。

『解説本』が溢れる出版業界への真っ向勝負が始まります……

後世の人々が勝手に解釈し、手垢のついた二番煎じはくらいの勢いです。
この『著述と文体について』は当時の物書きや批評家、文壇、ジャーナリズムのあり方、引いてはドイツ語やドイツ国民にまで及ぶショーペンハウアーの悪口いや愛ゆえの批判がてんこ盛りで、個人的には面白く感じます。

批判の斬れ味の良さを楽しむだけでなく、この章で私が心に残ったのは

①やたら難しい表現を使うのではなく、簡潔な文章で優れたことを語れ
②難しいことを説明するのには比喩が効果的だが、上質な比喩は物事の同質性を見抜く天賦の才が必要だ

の2点です。
特に②については、村上春樹やお笑い芸人の比喩の巧みさを思い出しました。
文章を豊かに理解しやすくするために、また会話の中で素早く『上手いたとえ』を放り込むためには、日頃から事実をメタファー(隠喩)に変換する癖がついていないといけないのじゃないかな、と。

読書について

本のタイトルにもなっている『読書について』ですが、『自分の頭で考える』『著述と文体について』ですでに語られている内容をまとめた感じです。

  • 悪書の多読は危険
  • 読書をして身になるのは、読後にじっくり考えて自分の中に落とし込む人である
  • 偉大な作家の著作を読んだだけで満足するな
  • やたら新刊・流行本を読むな(古典が良い)

新しく書かれた本が『古典』=後世まで残る良本となるまでの過程を考察した箇所も興味深いです。
ショーペンハウアーの考えを忠実に実行すると、出版業界が困るだろうなあとは思いますが……

ほしにゃー’sレビュー

ショーペンハウアーは考えることオリジナリティに満ちた美しい文章をこの上なく愛した人なのだろうなと感じます。
そしてショーペンハウアーが理想とする形ではない現実社会を憂えるあまり、批判してしまう憂国の士なのだと。

巻末の解説や年譜を読むと、彼がどういう人物だったのかが更に詳しく理解できます。
面白かったのは彼のお母さんも作家であり、息子であるショーペンハウアーの文才に激しい対抗意識を持っていたというくだり。

社会の価値観が幾度も変動した後『古典』となって読み継がれたのがどちらの著作か、皆さんもご存知ですよね。

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