AX アックス/殺し屋シリーズ3作目

アックス

今回は、2020年の文庫部門で4つのランキング1位に輝いた『AX アックス』伊坂幸太郎著をご紹介します。

目次

『AX アックス』の基本情報

基本情報

・文庫版:2020年角川文庫より出版/384ページ(媒体によって変動します)
・「殺し屋シリーズ」3作目。『グラスホッパー』→『マリアビートル』→『AX』
・「殺し屋シリーズ」は累計で280万部を超えるベストセラーシリーズ(2020年時点)
伊坂幸太郎は2000年に『オーデュボンの祈り』でデビュー以後、『重力ピエロ』『死神の精度』などの人気作品を世に送り出し続ける人気作家。

『AX アックス』の概要

殺し屋は極度の恐妻家

『AX』の主人公「兜(かぶと)」は、殺し屋というハードボイルドなイメージとは真逆の恐妻家
文房具メーカーの営業社員という表の顔を持ち、殺し屋としては同業者に一目置かれるほど優秀なのですが、息子にすら

「おふくろにいつも怒られてばかりだから、時にはがつんとやったらどうだろう」

伊坂幸太郎著『AX』より

などと言われてしまうほど。

ほしにゃー

そこまで気を遣う??と思うくらいの徹底ぶりです。

別に妻が暴力を振るうとか、暴言を吐くとかではないのです。
愛が深すぎるがゆえ、そしておそらく「自分が殺し屋である」という隠し事へのうしろめたさから来ているのではないかと推測します。

殺し屋を辞めたい殺し屋

兜(かぶと)は殺し屋稼業を廃業したいのですが、そう簡単にはいかないようです。
辞めるためにはそれなりの金が必要だと言われれば、仲介屋の言う通り「仕事」をしなければならない。

ほしにゃー

裏稼業と家族の両立は難しそうですもんね……

超一流の殺し屋である兜にとって、裏稼業よりも妻のご機嫌を良く保つことのほうが難しいという、カッコいいようなそうでないような悩みがこの作品の面白いところです。

AX アックスというタイトル

伊坂作品のタイトルはテーマ回収的な意味合いが強く、作品の中盤~ラスト付近で「ああそういうことか!」と腑に落ちることが多いのですが、『AX アックス』ではかなり始めの方で出てきます。

AX=斧。それも「蟷螂の斧」(とうろうのおの)
蟷螂(とうろう)とはカマキリのことです。カマキリの斧って、小さい虫にとっては脅威ですがカマキリより大きな生き物や無機物にとっては「痛くも痒くもない」程度の武器ですよね。

ほしにゃー

出典は前漢時代の韓嬰(かんえい)による『韓詩外伝』になります。

『韓詩外伝』によればカマキリが車の進行を止めようとして自分のカマを上げること、つまり「蟷螂の斧」とは、たいした実力もないくせに自分より強いものに向かっていく様子を表しています。

向こう見ずというか、無謀というか。
蟷螂の斧は「やったって無駄なのに」というネガティブな使い方と、「実力差はわかっているけれど立ち向かう」というポジティブな捉え方でも使われます。

ほしにゃー

AXでの使い方はどちらでしょうか。

シリーズものだけど単独でもOK

殺し屋シリーズの3作目ではありますが、『AX アックス』単独でも特に問題はありません。
ただ特に前作『マリアビートル』に出てくるキャラクターが登場しますので、読んでいればより楽しめるかなとは思います。

知らずに『AX アックス』を最初に買っちゃったよ!という方も、アックスを読了後に『グラスホッパー』『マリアビートル』を遡って読んでも大丈夫です。

ほしにゃー’s レビュー

ほしにゃー’sレビュー

「殺し屋シリーズ」も3作目となりました。
前作『マリアビートル』ではたくさんの殺し屋たちが登場し活躍しましたが、『AX』ではほぼ兜と兜の家族がメインです。

殺し屋というタフなイメージからかけ離れた、恐妻家で子煩悩な兜は「殺し屋シリーズ」の中で最も身近なキャラクタ―だと思います。
殺し屋は反社会的存在であり、犯罪者であることは動かしがたい……とはいえ、兜は家族思いであると同時に他者に対して「できるだけフェアであるべき」という信条を持っているところも親近感が湧くんですよね。

ほしにゃー

人情味のある殺し屋と表現していいものかな?

他の伊坂作品と同じように、物語には複数の伏線が張られていて、後半で綺麗に回収されていく気持ちよさもあります。
詳しくはネタバレになるので書けませんが、読了後「スカッとした!」と思える作品ですので安心して(?)お読みいただけます。

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