前作『シャーロック・ホームズの回想(思い出)』より8年後の作品です。
ホームズシリーズの長編4つのうち、3作目。
シリーズの中でも人気があり、何回も映像化されています。
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『バスカヴィル家の犬』の基本情報
著者 | サー・アーサー・コナン・ドイル |
初出 | 1901(明治34)年 |
ジャンル | 推理小説(長編) |
ページ数 | 245頁(新訳kindle版) |
シリーズ中 | 5冊目(長編の中では3冊目) |
前作 | シャーロック・ホームズの思い出 |
次作 | シャーロック・ホームズの帰還 |
依頼人 | ジェームズ・モーティマー |
事件現場 | ダートムーア |
『バスカヴィル家の犬』の簡単なあらすじ
ワトスンの価値
訪問客が忘れていったステッキを、ワトスンが観察・推理する場面から始まります。
そこでホームズから見たワトスンの評価が書かれているのですが、これ褒めてるんだけど微妙にディスられていて……ワトスンの性格の良さがにじみ出ています。
依頼人モーティマーも結構変わり者
事件の依頼人モーティマーがベーカー街221Bにやってきますが、ホームズのとある部分に”ぞっこん”になります。
また天然なのか、ホームズのプライドをつつくような発言もまじえながら事件について語りだします。
モーティマーが主治医を務めていたチャールズ・バスカヴィルが事件の被害者です。
バスカヴィル家に伝わる魔犬伝説
被害者チャールズ・バスカヴィルの家には、17世紀から伝わる不思議な魔犬伝説がありました。
今回依頼する事件も、この伝説が関係しているのかどうか、ホームズとワトスンの捜査が始まります。
『バスカヴィル家の犬』の見どころ
ワトスンとホームズ
『バスカヴィル家の犬』の見どころはズバリ、ワトスンの奮闘ぶりです。
事件の依頼を引き受けておきながら、ホームズは現場にワトスン一人を向かわせます。
ワトスンの本職はお医者さんだから……!!
ワトスンは元軍医なので肝は座っているのでしょうが、探偵としての訓練を積んでいるわけでもなく。
しかしホームズがワトスンを信頼している証拠でもありますよね。
そしてワトスンの誠実さ、勇敢さ、ホームズへの友情を感じられる物語になっています。
またストーリーの中盤までワトスン視点で進むことによって、読者はいろいろなミスリードに導かれていくことになります。
ホームズ登場、からの怒涛のような謎解きが心地よいのも、ある意味ワトスンの迷走(失礼)というタメがあったからでしょう。
幻想的な雰囲気と壮大な舞台装置、科学的捜査
『バスカヴィル家の犬』は実際に存在する伝説を基にしています。
また舞台がロンドンではなく沼地の多いダートムア郊外であり、人気のない広大な地を最大限利用した冒険譚であることが物語の奥行きを広くしているのです。
リアリストであり科学的な捜査を行うホームズが、オカルトチックな事件を解いていくというある種のミスマッチさも『バスカヴィル家の犬』の面白さです。
次作『シャーロック・ホームズの帰還』へ
前作『シャーロック・ホームズの思い出(回想)』から間を経て出版された『バスカヴィル家の犬』ですが、当時のホームズファンの反応は様々だったようです。
ようやくホームズが帰ってきた!と思いきや、『バスカヴィル家の犬』は時系列的に『シャーロック・ホームズの思い出』の最後の作品『最後の事件』以前だったことが波紋を呼んだのでしょう。
ホームズが正式(?)に帰還するのは、次作である短編集『シャーロック・ホームズの帰還』1作目の『空き家の冒険』です。
物語の中では『最後の事件』から3年後の『空き家の冒険』ですが、現実世界ではなんと8年後の出版。
当時のファンたちは嬉しかっただろうなあ……
『シャーロック・ホームズの帰還』の後は『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』(短編集)『恐怖の谷』(長編)『シャーロック・ホームズの事件簿』(短編集)と続きます。