お久しぶりです。お久しぶり過ぎたかもしれません。
よく見たら前回は1月ですよ。隔月連載とか、売れっ子掛け持ち漫画家みたいですよね。やったぜ。
読むことの効能。
読むことで得られるものってたくさんありますけど、今回は語彙力に焦点を絞ってみようと思います。
ボキャブラリーの多さと、使いこなすスキルのことです。
話すこと
さて、アメリカのドラマを観ていると話すことの重要さを良く感じます。
シャーロック・ホームズを現代ニューヨーク版にした『エレメンタリー ホームズ&ワトソンin NY』では、ホームズが麻薬患者で入院するほど酷かった設定になっており、退院しても定期的に”会合”に出席するシーンがあります。
会合は、立ち直ろうとする患者たちが集まって自分の克服への日常を話す場所。
自分の駄目さ加減・日々の苦しみも、赤裸々に話して聞いてもらうことでお互い一緒に頑張ろうな、と励ましあうわけです。
ここまで深刻でなくても、誰かが悩んでいると『話を聞こうか?セラピーは受けてる?』とすぐ尋ねる印象。
私たちの日常に起きる問題の多くは、複雑で解決が難しく「そんな簡単じゃねえよ!」と怒鳴りたくなるようなこともしばしば。
誰かに話しただけで解決するなら苦労はない、というのも真実ではあります。
しかし人間は自分のことを他人に理解してもらいたい生き物。話すことは万能ではなくても利するところが多いのです。
知ること
自分の気持ちを誰かに話すためには、まず自分を知らなければいけません。
自分が物事に対してどう感じたのか、感じたものの深さはどれくらいなのか、感じたことによってどういう影響を受けたのか……
書くことも同じですよね。
自分の内面をよくよく覗き込んで、なるべく正確に自分の状態を知ることが重要。
なるべく正確に、という部分で語彙力が登場するのです。
正確な言葉
知ることとアウトプット(話す・書く)には語彙力が助けになります。
たくさんの言葉を知っている = 選択肢が広がる
フランスの詩人ヴェルレーヌの「巷(ちまた)に雨の降るごとく」という詩をご存知でしょうか。
堀口大学の訳で有名な詩で、次のように続きます。
巷に雨の降るごとく わが心にも涙降る。
ヴェルレーヌ『巷に雨の降るごとく』堀口大学訳
フランス語の原文は置いておいて、ここでいう巷に降る雨がどのような雨なのか、想像してみてください。
雨の降るさまというのは、日本語でたくさんの言い回しがありますよね。
余談ですが、降雨量が少なそうなアラブ圏でも『雨』に関する表現は多いんです。不思議。
小雨・霧雨・驟雨・豪雨・氷雨……ちょっと考えただけでも様々な雨の降り方、表現があります。
『巷に雨の降るごとく』は喧嘩の末別れた恋人へ宛てた、獄中での詩ですし、心に降る涙のような雨なのである程度は想像できます。
どのような雨が降るのか。
雨に関する語彙が少ないと『巷に降る雨』がどのような雨なのか、理解も限定されてしまうのです。
自分の心の状態をより正確に把握する、そしてアウトプットするためにはたくさんの言葉を知っていることが重要。
読むことの効能:語彙力
本を読むと自然に語彙が増え、言葉の使い方も学べます。
自分の心を正確に理解し表現することはストレスの解消に繋がりますし、コミュニケーションも円滑に。
小説の神様と呼ばれる志賀直哉の文章を読んでいると、登場人物の心の動きがとても緻密に描いてあって気持ちいいのでおすすめです。
拳(こぶし)で語り合うのも一つの文化かも知れませんが、できれば物理的苦痛なしに相互理解できるといいですよね。