バイバイ、ブラックバード/5股男と怪獣女

バイバイ、ブラックバード

今回は伊坂幸太郎著『バイバイ、ブラックバード』をご紹介します。

ほしにゃー

テレビドラマ化もされた作品で、コメディタッチのオムニバス形式です。

目次

『バイバイ、ブラックバード』の基本情報

基本情報

『バイバイ、ブラックバード』新装版は2021年双葉文庫より出版/368ページ(2010年に双葉社より刊行されたものの新装版)/媒体によってページ数は変動します。
・太宰治の『グッド・バイ』へのオマージュ作品。
伊坂幸太郎(いさかこうたろう)は1971年生まれ、東北大学法学部卒業。2000年に『オーデュボンの祈り』で文壇デビュー。
・吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞など多くの賞を獲得、著作の多くはドラマや映画化されるなど実力・人気共に兼ね備えたベストセラー作家。

WOWWOWで連続ドラマになったものがDVD化されています。

『バイバイ、ブラックバード』の概要

太宰治(だざいおさむ)の未完の絶筆『グッド・バイ』へのオマージュ作品

太宰治といえば『人間失格』『走れメロス』『斜陽』などで知られる、日本文学の代表格ですよね。
伊坂幸太郎の『バイバイ、ブラックバード』は、その太宰治が途中でこの世を去ったため未完となってしまった『グッド・バイ』という小説を基にした作品になります。

ほしにゃー

『グッド・バイ』は著作権が切れているので、kindle版は無料で読むことができますよ!

『グッド・バイ』は、主人公田島周二が現在の乱れた生活を改めようと決心し、愛人たちと別れていく顛末記
愛人たちを諦めさせるため、大変美人な永井キヌ子を雇って愛人たちを訪れていくが……と展開していくはずでした。

妻子+約10人の愛人持ち『田島周二』→5人の恋人持ち『星野一彦』
黙っていれば絶世の美人だがガサツで品がなく怪力女『永井キヌ子』→縦にも横にもデカい無神経発言得意な怪獣女『繭美』

太宰治の本名は津島修治
『グッド・バイ』の田島周二は名前もほぼ津島修治ですし、美男で稼ぎはあるがかなりのゲス男という設定が太宰治の自虐ネタコメディタッチ。

永井キヌ子→繭美は「絹」→「繭」という連想でしょうか。

『バイバイ、ブラックバード』あらすじ

主人公星野一彦(ほしのかずひこ)は多額の借金を抱え、謎の組織が寄越すバスに乗せられることが決まっています。
バスがどこへ行くのか、到着地で何が待っているのかは作品内ではハッキリしません。

ほしにゃー

多額の負債が原因なので、過酷な未来が待っているのは想像に難くないですよね。

星野一彦は組織のお目付け役である繭美(まゆみ)に、バスに乗る前に5人の恋人たちへ別れを告げたいと申し出ます。
繭美は面倒くさがりますが組織からOKが出たため、星野一彦と繭美は恋人たちに会いに行くというストーリーです。

バイバイ、ブラックバードとは

『バイバイ、ブラックバード』はBye Bye Blackbirdという曲のタイトルから名づけられています。

Bye Bye Blackbirdは、1926年に制作されたジャズの名曲。
モート・ディクソン作詞、レイ・ヘンダーソン作曲のバイバイブラックバードは、マイルス・ディヴィスの”‘Round About Midnight”に収録されたことから広く認知され、多くのミュージシャンにカバーされてきました。

ブラックバード=黒い鳥は、不吉なもの・不幸な生活・黒人のことを象徴しているなどといわれますが、確かなことはわかりません。
やっぱりマイルス・デイヴィス版が一番有名でしょうか。ほしにゃーが大好きなジュリー・ロンドン版の、何とも言えない艶っぽいバイ・バイ・ブラックバードもおすすめです(^^)

たくさんありすぎてご紹介しきれないのですが、キース・ジャレット版のバイ・バイ・ブラックバードも落ち着いていて心地よいアレンジです。

『バイバイ、ブラックバード』の中では、誰バージョンの”Bye Bye Blackbird”なのかは書かれていないんですよね。
いろいろ聴き比べて、どれが一番小説に合うか考えてみるのも面白そうです。

伊坂幸太郎の小説はいつもタイトルが素晴らしく、読了後に「ああ、そういうことだったのか」と納得したり感心する読者も多いのではないでしょうか。
今回の『バイバイ、ブラックバード』もかなり終盤まで全く意味がわからなかったのですが、最後まで読んでいただくと小説全体を正しく表す、優れたタイトルだとお分かりいただけるかと思います。

ほしにゃー’s レビュー

伊坂幸太郎の作品は、現代社会が舞台でありながらどこかファンタジーのような異世界感が漂います。
しっかりキャラクター設定がなされていて破綻はないけれども、いつも通り『枠からはみ出た』クセの強い登場人物たちのせいでしょうか。

ほしにゃー

伊坂幸太郎ワールドへようこそ!

『バイバイ、ブラックバード』の主人公、星野一彦は5人もの恋人と付き合っている割ととんでもない男なのですが、ストーリーが進むにつれて何故そうなったのかが明かされていきます。
またバディとなる繭美も、始めは見た目も中身も規格外の恐ろしい生き物として現実離れしていますが、次第に内面が表現されて親しみが湧いてくる設計ですね。

二人の人格破綻者が「星野の恋人たちとのお別れ行脚」を繰り返すうちに互いを知り、恋人たちを知りる。
枠からはみ出てはいるのだけれどもそれぞれの哲学があり、苦悩があり、過去と未来があるのだと読者たちの共感を得ていく。

独特の言い回し、コミカルな中にも心に刺さる名言があり、ロードムービー的な『バイバイ、ブラックバード』をあなたも読んでみませんか?

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