坂口安吾には純文学だけではなく、様々なジャンルの著作があります。
今回は坂口安吾が書いた推理小説『不連続殺人事件』をご紹介します。
他の文豪も、実は推理小説を書いたりしてるみたいですよ。
『不連続殺人事件』は著作権が切れているので、青空文庫さんでも無料で読むこともできます。
『不連続殺人事件』の基本情報
・1947~1948年初出の長編推理小説/329ページ(媒体によって変動します)
・第2回探偵作家クラブ賞受賞
・1977年に映画化された他、テレビドラマにもなっている。
坂口安吾は推理小説が大好きで、仲間内で犯人を当てる遊びなどしていたそうです。
坂口安吾の随筆/エッセイに『推理小説論』があり、古今東西の推理小説について熱く語っていますので興味のある方はどうぞ(リンク先は青空文庫さんです)。
『不連続殺人事件』のあらすじ
冒頭部分は安吾節強めで登場人物の嵐
坂口安吾という作家は好き嫌いがはっきり分かれるように思いますが、冒頭部分はちょっと安吾的なクセ強めです。
絡み合った上に自堕落な人間関係、しかも大勢の登場人物が一気に出てくるので、相関図を把握……ストーリーが進めば把握できるので、細けぇこたあいいんだよという精神でサクッと読み進めることをおすすめします。
同様に、冒頭部分がクセ強めな純文学小説坂口安吾著『白痴』もございます。
クリスティ『そして誰もいなくなった』を彷彿とさせるクローズド・サークル
人間的にどうよと思われる人々が、招待状によって集まってきます。
完全に外界と隔てられているわけではありませんが、ゆるめのクローズド・サークル的な状況が作られてミステリ好きにはたまらん舞台設定が完了。
クローズド・サークルとは
クローズド・サークル(closed circle)は推理小説で用いられる手法の一つ。
様々な理由によって外界と行き来できない「閉じられた空間」の中で事件が起きる作品のこと。
絶海の孤島であったり、雪によって閉ざされた洋館であったり、列車や客船の場合もある。
ほしにゃーは何の予備知識もなしに『不連続殺人事件』を読みましたが、読了後前述の『推理小説論』を読むと、坂口安吾はエラリー・クイーンとアガサ・クリスティを絶賛しています。
(時代的なものなのでしょうが、クリスティをクリスチーと書いているのにクスッとしてしまうほしにゃー)
『不連続殺人事件』の舞台作りはクリスチーいやクリスティの『そして誰もいなくなった』に似ています。
不連続殺人事件と読者への挑戦
『不連続殺人事件』というタイトルからもわかるように、複数の殺人事件が起きます。というか、こんなに起きていいのかしらと思うほど起きちゃいます。
小説の中で「附記」として、坂口安吾から読者への挑戦状が提示されるのがエラリー・クイーンぽい。
犯人が誰か、どのように犯行が行われたのか当てた人には、なんと坂口安吾プレゼンツの賞金つき!(残念ながら締切は過ぎています)
小説を注意深く読めば犯人がわかる仕掛けになっており、この挑戦には江戸川乱歩や太宰治らも参加したようです。
舞台となった歌川家の見取り図や付近の地図などもあるので、推理力に自信がある方は是非挑戦してみてください。
ほしにゃー’s レビュー
『不連続殺人事件』は江戸川乱歩に絶賛されたそうです。
乱歩のようなエログロ要素は薄めですが、安吾としては怪奇ミステリ風にはしたくなかったようですね。
『推理小説論』の中で、珍奇で現実性のないトリックに走る小説を揶揄しているところを見ると、文章的にもトリック的にも純粋に推理を楽しめる形態を好んでいるのでしょう。
天才的な素人探偵がラストで事件を解明する形も、ミステリ愛好家らしくてニヤニヤしちゃいますね(私だけか)。
ちなみにほしにゃーは「ここ怪しくない?」と思った部分は合っていましたが、賞金はもらえなさそうです(くどいようですが締切は過ぎています)。