人気作家、伊坂幸太郎のデビュー作『オーデュボンの祈り』をご紹介します!
デビュー作と知らずに読んだのですが、あまりにも伊坂幸太郎、あまりにも完成された作品でした。
『オーデュボンの祈り』の基本情報
伊坂幸太郎(いさかこうたろう)は昭和46年生まれ、千葉県出身/宮城県在住の人気作家。
2000年『オーデュボンの祈り』でデビュー以後、コンスタントに作品を発表しドラマや映画化されている。
『オーデュボンの祈り』は第5回新潮ミステリー倶楽部賞受賞。2003年新潮社より文庫化/464ページ
ラジオドラマ、漫画、舞台化されている。
『オーデュボンの祈り』の概要
オーデュボンとは
タイトルの「オーデュボン」は人名です。ジョン・ジェームズ・オーデュボンという鳥類研究家/画家から名づけられています。
オーデュボンはフランス生まれ→アメリカへ→イギリスで『アメリカの鳥類』を出版しています。
なんと鳥類を観察し、水彩画で何百枚も描いたそうです。
伊坂幸太郎作品はいつもタイトルが非常に重要なのですが、デビュー作もご多分に漏れず「なるほど」と思うものになっています。
タイトルだけでなく、しっかりとキャラ設定された登場人物たちや独特の言い回し、張り巡らされた伏線の回収を見ることができます。
デビュー作にして、既に伊坂スタイルというべきオリジナリティが確立されているのが面白いですね。
『オーデュボンの祈り』のあらすじ
主人公である28歳の伊藤は、何か問題にぶつかるとすぐ逃げ出す性格。
城山という名の警察から逃げていたはずが、いつの間にか「萩島」という島で目を覚まします。
「萩島」は住人数千人、150年ほど鎖国(鎖島?)を続けているという謎の島だった。
荻島は仙台の近くという設定ですが、いきなり現代日本をファンタジーに変えてしまうあたりも伊坂ワールド……
荻島で伊藤はいろんな島民と出会います。その中で一番奇妙だったのはカカシの優午(ゆうご)。
優午はカカシでありながら人語を解すだけでなく、島を導く予言をするので島民の宗教指導者のような立場でした。
ある日優午は何者かによってバラバラにされてしまいます。
いったい誰が優午を亡き者にしたのか?予言者であったはずの優午は自分の未来を見ることができなかったのか?指導者を失った荻島はどうなるのか?そして伊藤は……
伊藤も読者も荻島のファンタジックな設定に最初は戸惑うのですが、読んでいるうちにまんまと引き込まれていきます。
ほしにゃー’s レビュー
『オーデュボンの祈り』の魅力
- 自分に自信がない、現状に不安がある人に寄り添う内容であり、読後カタルシスを得られる
- 現代社会の話ではあるが、設定やキャラがファンタジー的なので異世界トリップ的な楽しさがある
- 推理小説としても成立している/伏線の散りばめ方がさりげなく緻密である
- キャラクター一人一人が魅力的
- 全体のストーリーとして深いテーマがあり、軽妙で含蓄のある台詞回しも楽しめる
と列挙してみましたが『オーデュボンの祈り』に限らず、これから後に続いていく伊坂幸太郎作品全てに共通していますね。
伊坂幸太郎作品は柔らかい語りですが、社会に息づく悪や無常を深く抉り出し読者に提示する特徴があります。
その上で人がどう生きるのか、どう関わりあっていくのかを描いていくからこそ、作品に深みや昇華的要素が生まれてくるのだと思います。
まずは一冊、と思っていらっしゃる方に『オーデュボンの祈り』はおすすめです。
もっと軽いテイストのがいいなという方にはコチラ↓
江戸時代から鎖国してるのに、道路工事とかバスとか輸入(?)できる轟さんちの機動力がすごいよな……