伊坂幸太郎著『クジラアタマの王様』をご紹介します。
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『クジラアタマの王様』の基本情報
著者 | 伊坂幸太郎(いさかこうたろう) |
初出 | 2019年(書きおろし) |
ページ数 | 361頁(kindle版) |
『クジラアタマの王様』の概要
クジラアタマの王様とは
クジラアタマの王様とは、ハシビロコウという鳥です。
ハシビロコウはペリカン目で、顔部分はややペリカンに似ています。
英語名はシュービル(shoebill)で「靴のようなクチバシ」という意味ですが、確かに靴っぽい。
学名がラテン語でBalaeniceps rex(クジラ頭の王様)というところから『クジラアタマの王様』というタイトルになっています。
日本の動物園にもいるので、お近くの方は是非!
『クジラアタマの王様』のあらすじ
お菓子メーカーに勤める岸(きし)が主人公(楽天イーグルスの岸孝之投手にちなんで名付けられている)。
ある日かかってきた商品についてのクレーム電話が発端となり、思わぬ事態へと発展してしまう。
クレーム事件によって岸が知り合った都議会議員の池野内征爾(いけのうちせいじ)、そしてアイドルの小沢ヒジリ。
不思議な縁を持つ3人は世界規模の問題に関わっていくが……
アイドル小沢ヒジリのモデルは、岩ちゃんこと岩田剛典さんだそうです。どうりでキラキラしてたわ……
小説と漫画のコラボという新しい試み
『クジラアタマの王様』は、伊坂作品としては初めての「漫画とのコラボ」に挑戦しています。
ただ、漫画といっても通常の漫画と違い短いもので台詞もありません。しかし挿絵とも違う意味合い。
漫画の部分はゲーム「モンスターハンター」をイメージしたそうで、シンプルですが可愛らしい絵柄になっています。
パスカとは
作中に頻繁に登場する「パスカ」という単語があります。
特にストーリーと関連があるわけではなさそうですが、スマホですかね。
いつもの伊坂作品と同じく「現代日本にとても似ている疑似的な日本」or「違う世界線の日本」が舞台ですので、わざと強調したのかも……
安吾の『不連続殺人事件』
作中にぽーんと登場するので、知ってる人だけニヤリとする「安吾の『不連続殺人事件』」。
安吾とは坂口安吾(さかぐちあんご)で、明治~昭和を生きた無頼派の作家です。
前後の文章からどういう意味合いで使われているのかは推測できますが、シンプルに推理小説として面白い作品なので機会があれば是非お手に取ってみてください。
ほしにゃー’s レビュー
読み始めてしばらくは、重い話かと思っていたのですが。
今回ご紹介した『クジラアタマの王様』は舌鋒鋭く社会の闇を切り裂くようなものではなく、いつもより軽め、エンターテインメント色強めの感じでした。
賛否あるかとは思いますが、私は好きなテイストです。
また物語の進め方が村上春樹の手法に似ていて、しかし似ていない。
別に寄せていったわけではないのでしょうが、村上作品を読んだことがある方なら軽くデジャヴを覚える程度な気がします。
伊坂幸太郎の社会派作品は「もういいです(泣)」と言いたくなるほど「人の心にある悪」を抉り出すのが特徴ですが、『クジラアタマの王様』はそこまで深堀していないのである意味安心(?)。
ページ数もそう多くないですし、楽な気持ちでサクッと読める作品です。