マリアビートル/殺し屋シリーズ2作目

マリアビートル

今回ご紹介する『マリアビートル』は、ハリウッドで製作中の映画『バレット・トレイン』の原作です。
監督に『ジョン・ウィック』『デッドプール2』のデヴィッド・リーチを迎え、主演はブラッド・ピット。
アメリカで活躍する日本人俳優マシ・オカや真田広之も出演する豪華な作品に仕上がるようです。

ほしにゃー

迫力のあるアクションシーンが多いので、ハリウッドでの映画化は見ごたえがありそう!

目次

『マリアビートル』の基本情報

基本情報

『マリアビートル』は2010年角川書店より出版(文庫版は2013年)/592ページ(媒体によって変動します)
・殺し屋シリーズの2作目にあたり、『グラスホッパー』→『マリアビートル』→『AX アックス』と続いている。
・2018年に舞台化されている。
伊坂幸太郎(いさかこうたろう)は1971年生まれ、東北大学法学部卒業。『オーデュボンの祈り』で作家デビュー後、コンスタントに良作を発表し続ける人気作家。

ほしにゃー

マリアビートルも、伊坂作品の中で特に人気がある作品です。

『マリアビートル』の概要

物語は新幹線の中で

ハリウッド映画のタイトルが『バレット・トレイン』ということからもおわかりでしょうが、『マリアビートル』はほぼ新幹線の中でストーリーが進行します。
作者である伊坂幸太郎氏は東北新幹線をよく利用されるそうで、『マリアビートル』の舞台が東北新幹線「はやて」なのも納得です。

ほしにゃー

ほぼ密室の中で事件が起きていくという展開、好きな人にはたまらない……クリスティの『オリエント急行殺人事件』『ナイルに死す』が読みたくなりますね。

『マリアビートル』は東京駅から始まり、盛岡駅で降りるまでの2時間半~3時間ほどを描いた作品になります。

前作『グラスホッパー』から6~7年後という設定

『マリアビートル』は殺し屋シリーズの2作目です。
1作目『グラスホッパー』に出てきた反社会的勢力「フロイライン(令嬢)」が今回も絡んできますし、登場人物も被る部分があります。

ほしにゃー

『グラスホッパー』を先に読むのも良し、『マリアビートル』単体でも理解できます。

ストーリー的には『グラスホッパー』を未読でも問題ありませんが、関連を知っているとより楽しめるので、これから購入される方は発行順に読むのをおすすめします。

主人公が二人?それぞれの思惑で絡み合う殺し屋たち

『マリアビートル』は元殺し屋・木村雄一(きむらゆういち)視点からスタートします。
木村雄一はストーリー上主人公ぽい立ち位置なのですが、天道虫と呼ばれる殺し屋、七尾(ななお)の方が真の主人公かな、と。

ほしにゃー

ハリウッド映画『バレット・トレイン』の七尾をブラッド・ピットが演じているところからも、七尾が真の主人公ぽい。

新幹線「はやて」には、それぞれの使命を帯びた殺し屋たちが乗り合わせて事件を起こします。
主な殺し屋をご紹介しておきますね。


木村雄一
元殺し屋。息子をひどい目に合わせた「王子」に復讐する予定


蜜柑(みかん)
身長180cmほど/やせ型/小説好き/知的/檸檬の相棒/ある物と人を護衛して盛岡まで行く予定


檸檬(れもん)
身長180cmほど/やせ型/機関車トーマスマニア/直情的/蜜柑の相棒/ある物と人を護衛して盛岡まで行く予定


七尾(ななお)=天道虫
運に見放された男/仲介役真莉亜(まりあ)の指示で動く/追いつめられると強くなる/子供に弱い/「はやて」であるものを盗んで上野で降りるだけの予定


槿(あさがお)
道路際でターゲットを「押す」殺し屋。

マリアビートルとは?


七尾の殺し屋としての名前は『天道虫(てんとうむし)』ですが、天道虫は英語でladybeetle(レディビートル)と言います。

ほしにゃー

アメリカでは、天道虫は縁起のいい生き物というイメージがあるそうです。

ladyにはいろいろな意味があり、キリスト教で イエスの母マリアのことを”Our Lady” (われらの貴婦人)と呼ぶ場合があります。『マリアビートル』というタイトルはそこに由来しているようです。

レディバグ、レディビートル、てんとう虫は英語でそう呼ばれている。
その、レディとは、マリア様のことだ、と聞いたことがあった。

伊坂幸太郎著『マリアビートル』より

七尾のバディというか、仲介役が真莉亜(まりあ)という名前なのも意味深ですよね。

ほしにゃー’s レビュー

ほしにゃー’sレビュー

『マリアビートル』は紙媒体の単行本で600ページ近くある長編ですが、少しも退屈に感じないどころか「次はどうなるのか?」と気になってページをめくる手が止まりませんでした(寝る前に読み始めるのは危険です)。

殺し屋たちの魅力

今回も「殺し屋シリーズ」の名に恥じない(?)ほど、プロの殺し屋たちがたくさん登場します。
一般人のほしにゃー(と読者の多く)は日常生活で殺し屋に出会うことも、その仕事ぶりを目にすることもありませんよね。

当然『マリアビートル』はフィクションですので、作中の殺し屋たちも架空の人物ではありますが一人ひとりの人生感、性格がしっかりと作られているので「私の横にいるかもしれない」と思えるほどのリアリティ、親近感すら覚えてしまうのです。

ほしにゃー

特に『マリアビートル』では殺し屋たちが関わりあうので「推し」の殺し屋を応援しちゃう……

目をそらせない「悪」の存在、悪とは何か?

伊坂幸太郎の作品では「悪」というものから目をそらさず、切り込んでいく描写が見られます。
『マリアビートル』は特に「悪とは何か、なぜ人は人を殺してはいけないのか?」を問う場面が印象深い。

普段考えもしない恐ろしい悪意が、実は身近に息づいている可能性を示されると怖くてたまらなくなります。
胸糞悪くて、見たくなくて、でもこの現実世界に確実に存在する「悪」をどう考え自分の中に落とし込んでいけばいいのか。

ほしにゃー

今回の悪役は、読んでてほんと気分が悪くなるほどの「悪」でした。

本来「悪」側であるはずの殺し屋たちが「正義」であるかのような、そんな錯覚すら実は正義であるかのような、不思議な価値感逆転の世界を味わえるのも殺し屋シリーズの醍醐味かもしれません。

『殺し屋シリーズ』1作目の『グラスホッパー』についてもレビューしていますので、よろしければどうぞ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次