夏目漱石のいわゆる前期三部作の第一作、『三四郎』をご紹介します!
『三四郎』は大学生が主人公で、恋愛小説風味です。
『三四郎』は著作権が切れているので、kindleで無料で読めます。
いや紙媒体で買って読みたい!という方はこちら
『三四郎』の基本情報
・1909(明治42)年発行。朝日新聞に連載されていた長編小説。
・岩波文庫の『三四郎』は325ページ(媒体によって変動します)
・前期三部作は『三四郎』→『それから』→『門』と続きます(ストーリーは繋がっていない)。
・作中に出てくる東大構内の池は、この作品にちなんで「三四郎池」と呼ばれている。
『三四郎』の概要
あらすじとヒロイン美禰子
『三四郎』の主人公は、小川三四郎という福岡県出身・熊本で高校卒業したばかりの青年(数えで23歳)です。
三四郎が東京帝国大学(現在の東大)へ進学するために、電車で上京するところから物語は始まります。
当時は大学が4月ではなく、9月始まりなんですよね。
のっけから未亡人とのワンナイトラブ未遂事件が勃発するなど、なかなか刺激的。
『三四郎』は地方から来た青年の東京での生活を描いた青春譚であり、明治末期・日露戦争以後の日本の空気を感じることができる長編小説です。
ヒロインの美禰子(みねこ)については、見方が分かれる気がします。
『三四郎』を読んでいくと、いったいヒロイン美禰子は誰を好きなのか問題にぶつかります。
作中では明確な意思表示をしないので正解はないのですが、美禰子は誰を好きなのか?と考えながら読むのも推理小説みたいで面白いですよね。
#再読#夏目漱石#三四郎
— ほしにゃー🐾灰色猫が本体 (@Karen10910) May 13, 2021
三四郎と言うと小宮と返ってきそうな昨今ですが、主人公は小川三四郎で恋敵(?)が野々宮というニアミスw
とにかくヒロイン美禰子が周りの男子・男性を誘惑したりしなかったりする迷える子羊(ストレイシープ)っぷりに三四郎が振り回されちゃうピュアな恋心のお話。初々しい✨
モデルとなった人物
『三四郎』の登場人物は、ほぼ全ての主要人物に実在のモデルがいることで有名です。
三四郎→小宮豊隆(漱石の弟子でドイツ文学者・東京帝国大学文学部卒)
三四郎小宮……!
ちなみにお笑い芸人の『三四郎』というコンビ名は、漱石の小説とは関係ないそうです。
美禰子→平塚雷鳥(平塚らいてうとも書く。女性解放運動家。雑誌『青鞜』に書いた『元始、女性は太陽であった』で有名。)
野々宮宗八→寺田寅彦(漱石の弟子で物理学者。東京帝国大学理科大学・大学院卒)
などなど、事前に調べてから読むもよし、読了後調べても楽しいです。
ほしにゃー’s レビュー
『三四郎』は空の描写が多い。またなんといっても女性(特に美禰子)についての色鮮やかな表現が多用されています。
前途ある若者の、柔らかく鋭い感性を強く押し出した作品だからでしょうか?
明治の青年らしい奥ゆかしさ、若さゆえのプライド、恋愛経験のなさからくる鈍さも細やかに描かれていて、もどかしさも覚えつつとても爽やかな気持ちになりました。
漱石の作品は「過去に犯した罪に苦しむ系」の主人公も多いけれど、今作は三四郎と一緒にいろいろな新しいもの・人に出会っていく探検系とも言えます。
ヒロイン美禰子の言動が「思わせぶり」なのは、男性諸氏から見れば「不実」であり「ファム・ファタール的」かもしれない。
美禰子視点で『三四郎』を読むと、印象は違ってきます。
当時数少ないだろう高等教育を受けた、新しい価値観を持つ美禰子。
女性が好きな仕事を選べない当時、結婚相手を誰にするのかは物質的にも精神的にも死活問題だったのではと推測します。
美禰子はモデルとなった平塚雷鳥ほどの強さはないのですが、stray sheep(迷える子羊)として自分の生きる道を模索する姿は「単なる悪女」と片付けてしまうのは、早計に思えるのではないでしょうか。
(ほしにゃー個人的には、理系男子で実績もあるし、なんだかんだで妹にも優しい野々宮先輩推しですけどねw)