シャーロック・ホームズシリーズの第2作目『四つの署名』をご紹介します。
長短編併せて60作あるシリーズの中で『緋色の研究』(The Study in Scarlet)に続く長編です。
『四つの署名』の基本情報
著者 | サー・アーサー・コナン・ドイル |
初出 | 1890(明治23)年 |
ジャンル | 推理小説/長編 |
ページ数 | 179頁(新訳kindle版) |
前作 | 緋色の研究(長編) |
次作 | シャーロック・ホームズの冒険(短編集) |
依頼人 | メアリー・モースタン |
依頼内容 | 謎の人物からの呼び出しに同行してほしい |
現場 | ライシアム(ライセウム)劇場 ( 21 Wellington St, London WC2E 7RQ イギリス) |
ライシアム劇場はロンドンのウェリントン通りにあります。
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『四つの署名』の見どころ
知的興奮と捜査手法
第1作『緋色の研究』と同じく、『四つの署名』もワトソンから見たホームズの様子から始まります。
ベーカー街221Bでのホームズの日常生活は現代日本人からすると驚く部分もありますが、19世紀末ロンドンの空気感として読み進めていただければと思います。
ホームズとワトソンは『緋色の研究』の頃より打ち解けています。
ホームズは面白い事件、知的興奮を覚える事件を常に待ち続けて退屈しているようです。
またホームズの捜査手法についての哲学も語られますが、論理的思考を重視するホームズの論理的でない部分もワトソンに見抜かれているところがミソ。
あてはまらない事柄をひとつひとつ消去していけば、最後に残るのが事実にほかならない
コナン・ドイル著『四つの署名』より
シャーロック・ホームズのこの考え方↑は、推理小説や漫画によく出てきます。
国民的アニメ(漫画)である名探偵コナンでもありましたね……
江戸川コナンの名前も、コナン・ドイルからつけられています。
ワトソンの家族情報
推理について話しているうちに、ワトソンの家族に関する情報も明らかになります。
この部分はBBCシャーロックでも取り入れられていますが、現代風になっています。
原作を知っている人だけがニヤリとできる造りがイイ!
ワトソンの恋模様
『四つの署名』の最も大きなトピックは、ワトソンの恋です。
冒頭部分で、ホームズの「感情は捜査の邪魔になる」という持論がフラグ的な働きをしています。
ワトソン視点で物語が語られるので、ワトソンが恋に落ちた瞬間やどんどん相手に惹かれていく過程がとてもわかりやすく可愛らしい。
そして全てホームズにはお見通しな感じも男の友情というか、ほのかなブロマンスにも読めるので、多面的な魅力があります。
『四つの署名』の簡単なあらすじ
第1部
モースタン嬢の依頼は、ライシアム劇場に同行してほしいというもの。
謎の人物から毎年誕生日に真珠が届くようになり、ついには「ライシアム劇場で会いたい」という手紙を受け取ったのです。
モースタン嬢の父、モースタン大尉はインドから帰国して行方不明になっているのですが、謎の人物はモースタン大尉と関係があるようです。
イギリス領インド帝国
当時のインドは、イギリスの東インド会社統治から進んでイギリス領インド帝国となっています。
シャーロック・ホームズシリーズではよくインドが絡んできますが、これは植民地になっていてつながりが深いこと、そして当時のイギリス人からすると未知の異世界感があるからでしょう。
『四つの署名』ではありませんが、日本情報も登場しますよ!
第2部
第2部は、第1部で解決された事件の背景について書かれています。
またワトソンの恋の行方についても知ることができるので最後まで見逃せません。
ほしにゃー’s レビュー
理性のホームズと常識人のワトソンという絶妙なコンビ関係は、コナン・ドイルが遺した大きな遺産です。
しかしホームズといえども人間であり、完全に感情から逃れられない部分が見え隠れするのも、キャラクターを厚みのある魅力的なものにしています。
『四つの署名』はイギリスとインドを股に掛けた大掛かりな推理小説であると同時に理性VS感情のバトルであり、ワトソンの恋が随所に散りばめられた恋愛小説でもあります。