今回は坂口安吾(さかぐちあんご)の人気作品「夜長姫と耳男」(よながひめとみみお)をご紹介します。
「夜長姫と耳男」は青空文庫でも読むことができます。
人気作ではありますが、残酷な表現があるので苦手な方はご注意くださいね。
『夜長姫と耳男』の基本情報
・1952(昭和27)年初出の短編小説/68ページ(媒体によって変動します)
・坂口安吾の小説としては『桜の森の満開の下』と共に人気がある作品
・説話(民話や神話的な物語)調で書かれている
・舞台は飛騨(岐阜県)
・作者の坂口安吾は1906(明治39年)生まれ、1955(昭和30年)没の小説家・評論家で無頼派/新戯作派の一人
『夜長姫と耳男』は近藤ようこさんによって漫画化されています。
近藤ようこさんは『うる星やつら』『めぞん一刻』など多数の名作の作者である漫画家高橋留美子さんと共に高校時代、漫画研究会を立ち上げ活動していたそうです。
折口信夫に傾倒し大学進学しただけあって民俗学や国文学に詳しく、『夜長姫と耳男』の他にも坂口安吾の『桜の森の満開の下』『戦争と一人の女』を漫画化しています。
他の漫画家さんも『夜長姫と耳男』を漫画化しています。読み比べてみるのも面白そうですね。
『夜長姫と耳男』のあらすじ
飛騨随一と謳われた匠を師匠に持つ耳男(みみお)。
夜長の長者が耳男を入れた3人の匠を呼び寄せて、娘である夜長姫のために弥勒菩薩と厨子(ずし/仏を入れる箱)を作ってほしいと言い渡す。
耳男は顔は馬のよう、耳はウサギのように長いという風貌です。
姫が一番気に入った仏像の作者には、美しい機織り奴隷の江奈古(エナコ)を褒美として与えるとした長者の言葉に耳男は憤り、不当だと知りつつも江奈古(エナコ)を侮辱する。
江奈古(エナコ)は耳男の悪口に対して怒り、とある行動をとる。
3人の匠が作った仏の中で、夜長姫が気にったのは耳男の作品だった。
その頃村では疱瘡(ほうそう)が流行し多くの死者が出ていたが、夜長姫は人々の死にゆくさまを楽しんでいて……
ほしにゃー’s レビュー
人間の男と、異界(ぽい)の姫のお話。
男の側から見た恋愛観と取るか、女性という存在を芸術として捉えた世界観と取るかなど、多くの解釈を可能にする作品です。
どちらにせよ、男性というか坂口の一方的な感じは否めませんが。
耳男が江奈古と夜長姫という二人の女性(夜長姫は13歳)への恋心を抱く→恋に負けまいと葛藤し奇行に走る=芸術への昇華ということもできますが、とにかく夜長姫の人間離れした感性のクセがスゴイ。
夜長姫が坂口の女性観だとしたら歪みすぎてる(汗)文学として理解する以前に「サイコパスで気味が悪い」と感じる方もいらっしゃると思うので、はっきり好き嫌いが分かれる辺り坂口作品らしいですよね。
「好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ」
坂口安吾著『夜長姫と耳男』より
余談ですが『夜長姫と耳男(みみおとこ)』だったら村上春樹ぽいですよねw