今回は日本での三国志人気の火付け役、吉川英治著『三国志』をご紹介します。
ほしにゃーの三国志との出会いは吉川英治著『三国志』でした。
講談社の文庫で全8巻(紙の書籍)と長編ですが、文章が簡潔にして美しい。
三国志演義を土台としつつ吉川英治風味を加えられた『三国志』は、日本人の心にフィットする一大叙事詩のような傑作です。
吉川英治著『三国志』は戦時中に書かれたものなので、著作権が切れています。
青空文庫さんやkindleにて無料で読むことができます。
『三国志』の基本情報
・1939(昭和14)年~1943(昭和18)年に新聞で連載された。
・執筆中、吉川英治は従軍記者として中国を訪れている。
・三国志演義を主な土台として書かれているが、演義にあるような超自然的な力や現象についてはぼかして表現してある。
・吉川英治は1892(明治25)年生まれ、1962(昭和37)年没の小説家。
・『三国志』の他に『宮本武蔵』『鳴門秘貼』など多くの著作を残した。
横山光輝著『三国志』(コミック)は吉川英治の『三国志』を基にしたものです。
『三国志』の概要
桃園の誓いに始まり、孔明の死で終わる
吉川英治著『三国志』は劉備・関羽・張飛の三人が出会い、国を憂い、桃園の誓いをするところから始まります。
演義では特に特筆すべきドラマもなくサラッと終わる部分ですが、吉川英治によって三人三様の味付けがしてあり物語の世界に入りやすい仕掛けとなっています。
演義は魏・呉・蜀が司馬炎の興した晋に統一されるところまで書かれています。
しかし吉川英治著『三国志』は劉備亡き後国を任された孔明が五丈原において没し、楊儀の傘下へ入るのを拒否した魏延(ぎえん)が謀反人となる場面までで終わりとなっています。
物語とは別に篇外余録として、孔明の死後や晋による統一までを説明しています。
吉川英治的には曹操で始まり孔明で終わり!という意識だったようです。
孔明死後も面白い↓ので是非……
曹操の扱いの変遷
演義においての曹操は単なる敵役というか悪役ですが、吉川英治著『三国志』では人間味豊かな魅力のある人物として描写されています。
政治や詩作の才能が豊かなことや才能ある武人へのリスペクト半端ないむしろラブなの?と思えるほどの人間臭さが、曹操というキャラクターを深みのあるものにしているのです。
中国においても、演義の影響で「曹操は悪役」というイメージが強かったようです。
ただ1950年代に入ると曹操のイメージは変わります。それは毛沢東が曹操推し、いえ曹操を反儒教の人物として高評価したから。
毛沢東だけでなく、魯迅などの知識人たちも曹操の才能を評価しています。
ほしにゃー’s レビュー
父の本棚にあった『三国志』を手に取ったのは小学校高学年の頃。
読めない漢字・知らない熟語は想像しながらという荒っぽい読み方でしたが、それでもなお面白すぎてページをめくる手が止まらなかったのを覚えています。
中国人以上に日本人の三国志愛は強いらしいですが、吉川英治著『三国志』の影響が大きいのは否めないでしょう。
他国の歴史に基づいた物語が小説となり、漫画となり、ゲームとなり……日本の中で一大コンテンツに成長しているというのは本当に不思議ですよね。
演義から大きく外れることなく、日本人好みの『三国志』を世に送り出した吉川英治の功績は計り知れません。