風立ちぬ/堀辰雄の自伝小説

風立ちぬ

今回はジブリ映画の原作の一つである、堀辰雄(ほりたつお)著『風立ちぬ』をご紹介します。

ほしにゃー

ジブリ映画はてっきり堀辰雄著『風立ちぬ』の映画化だと思ってたら、原作は一つだけじゃなかったんです。

堀辰雄の『風立ちぬ』は著作権が切れているので、kindleで無料で読むことができます。

紙媒体で手元に置きたい派のあなたはこちら↓をどうぞ。

目次

『風立ちぬ』の基本情報

基本情報

1938年野田書房より刊行/208ページ(媒体によって変動します)
・作者である堀辰雄の実体験をベースに書かれている。
・「序曲」「春」「風立ちぬ」「冬」「死のかげの谷」の5章で構成されている。
・1954年と1976年に映画化され、1976年版は山口百恵と三浦友和が主演を務めている。
・テレビドラマ化、アニメ化されている。
・2013年公開されたジブリ映画『風立ちぬ』の原作のひとつ。

『風立ちぬ』の概要

風立ちぬというタイトル

『風立ちぬ』というタイトルは、ジブリ映画と同名であることからも大変有名です。

ほしにゃー

アニメ映画だけでなくドラマ化や実写版での映画化も多いので、どの年代の方にも浸透しているタイトルですよね。

『風立ちぬ』には、実は続きがあります。作中に数回出てくる下記のフレーズからつけられています。

風立ちぬ、いざ生きめやも

堀辰雄著『風立ちぬ』より

このフレーズは堀辰雄のオリジナルではなく、フランスの詩人・小説家であるポール・ヴァレリー著『海辺の墓地』にある一説を堀辰雄が翻訳したものです。

Le vent se lève, il faut tenter de vivre.

ポール・ヴァレリー著『海辺の墓地』より

この堀辰雄の『風立ちぬ、いざ生きめやも』は誤訳ではないかという説もあるのですが、意味としては『風が立った、さあ生きなければならない』となります。
ちなみにグーグル翻訳にかけてみたら”The wind is picking up, we must try to live.”となりました。

ほしにゃー

生きようと試みなくてはいけない、という強い意志を感じますね。

堀辰雄について

堀辰雄は1904年(明治37年)東京生まれ、1953年(昭和28年)没の小説家です。
堀辰雄自身と婚約者は肺結核を患い、その療養生活から構想を得たのが『風立ちぬ』になります。

ほしにゃー

バリバリの理系少年だったようですが、旧制高校時代に文学に目覚めます(東京帝国大学国文科卒)。

関東大震災(1923年)に罹災し、母を失います。この時の経験が、後の堀辰雄文学を作ったと言われています。
室生犀星、芥川龍之介などと知り合い影響を受け、同期には小林秀雄がおり、川端康成、折口信夫とも交流がありました(交友関係めっちゃ豪華)。

フランス文学、日本の古典文学に傾倒し自らの作風に昇華しようとしました。
代表作は『風立ちぬ』『聖家族』『美しい村』『かげろふの日記』『菜穂子』など。

ジブリ映画『風立ちぬ』との関係

2013年公開のジブリ映画『風立ちぬ』は、堀辰雄著『風立ちぬ』他と堀越二郎の人生をミックスして書かれた宮崎駿(みやざきはやお)監督の漫画を原作としています。
堀越二郎とは航空技術者であり、零式艦上戦闘機(いわゆる零戦)の発明家として有名な人物です。

ほしにゃー

堀辰雄と堀越二郎は1歳違いなので、同年代です。
堀越二郎も東大(工学部)卒なので、キャンパスで顔を合わせたこともあるかも……

ジブリ映画には堀辰雄の作品『風立ちぬ』だけではなく、同じく堀辰雄著『美しい村』や『菜穂子』などのエッセンスも盛り込まれていますので、映画と比べてみると面白いかも知れませんね。
私見ですが、映画の二郎さんの性格は堀越二郎さんご本人ぽい気がします。

ほしにゃー’s レビュー

ほしにゃー’sレビュー

個人的に『文学史で覚えたけど、中身読んでない本読むシリーズ』、堀辰雄編です。
作者・タイトル・文学史での位置は知ってるけど、読んだことのない本ってたくさんありますよね……

ほしにゃー

小林多喜二の『蟹工船』とかは挫折した私w

ということで『風立ちぬ』。
登場人物も舞台も日本ですが、読んでいくうちに日本ではないどこか外国のような空気感を覚えました。
堀辰雄はフランス文学に傾倒したようですので、その関係もあるのでしょう。

ほしにゃー

執筆当時主流だった私小説に比べて、描写も雰囲気も清らかでロマンティック。

恋愛の美しい部分だけを切り取ってつまびらかにされたような、献身的で一途な恋情物語。
それと大自然の清々しさを写し取った風景描写が上手く溶け合っていて、読者の心にも一陣の風が吹いてきそうな小説でした。

ただ時代的な背景もあり、男尊女卑的な態度・台詞も見受けられるので引っかかる部分があるかも知れないですね。
飽くまでも戦前の小説であり、当時の価値観で書かれた作品であることを踏まえて読んでみるのをおすすめします。

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